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North clock

design in 2001 / ABS,Aluminium

 

 

普通に美しい時計。基本をおさえた誠実な時計。しかし退屈でない時計。特別な普通の時計。そういう時計を目指してデザインしました。かなり大型ですので、デザインにこだわりのあるオフィス空間などをイメージしています。どの時計にも言えるのですが、使用される環境と、現実的な欲求に基づいて文字の大きさ見やすさなどを決定しています。この時計の場合、大空間での視認性とニュートラルな存在感との調和、ひらたく言うと数字や指標の主張を抑えながら見やすさを確保するバランスです。とは言え、シンプルなのですが、限界まで薄くした本体枠、その薄さゆえ針など駆動部分を納めるためにコストの高いドーム状に彎曲成型したガラスを専用金具でマウントしていたりと、ディテールはかなり凝っています。針もカマボコ型に成型した専用品です。普遍性と特殊性のバランスにかなり苦労したのですが、おかげさまで大ヒット商品となりました。とくに予想外だったのは「赤」の人気です。これは完全に僕の趣味で追加したのですが、なぜかとても評判が良くて嬉しい限りです。

あまりの大ヒットで嬉しい悲鳴なのですが、やはり一般家庭向けには大きすぎる、もっと小型のものが欲しいという御要望も多くいただき、2005年に小型版を追加いたしました。(おかげさまでこれもオリジナルを超えるヒット商品になりました)ほんとうにオリジナルをそっくりなのですが、ただ小さくしただけでは同じ雰囲気にならず、断面のディテールを工夫してより薄く見せるなどオリジナルよりも凝った設計になってます。また、家庭用ということで専用スタンドも新規に開発しました。家庭では正確に何秒なのかを認識するよりも、瞬間的に「今はだいたい何時か?」を知りたいことが多いだろうと判断し(だって手元に携帯がありますしね)、思いきって分の刻みを省略し数字をドット代りに用いて瞬間視認性を高める工夫をしました。急いでるときほどチラ見で時間を知りたいですし、急がない時はなにかしながらチラっと時間がわかりたいのではないでしょうか。どれだけ実際に使うひとの本音の欲求に近付けるか、答えることができるかが大きな課題だな、と時計をデザインしてていつも思います。