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Re:Born

design in 2003 / ABS,Lacquer

これはもともとは漆風の塗装のうえに蒔絵調の印刷がほどこされた、とある地方の地場産業のフェイクな製品でした。おそらく、多くの方の家にもたとえばミカンやお煎餅などが入れられた似たような製品があったかと思います。およそデザイン的な世界とは離れた製品、、、のはずだったのですが、偶然、目にしたこれらの素地はとても美しいカタチをしていました。それはたしかに永い伝統に裏付けられた、職人芸による「用の美」だと思います。フェイクの下には本物の美しい伝統的なカタチが潜んでいたのです。

すでに役目を終えて廃棄を待つだけになろうとしている60年代の古い金型たち。それらが本来持っていた「美」を現代的な手法により再発見し、再生することはできないだろうか。モダンでありながら日本的な色を慎重に選び、漆の技術を応用した高品質な塗装を施すことで、美の再発見へと向かわせることはできなだろうか。地場産業の持っている本当の実力を可能な限り引き出すことはできなだろうか。そういう試行錯誤の中から、これらの製品が生まれました。

いま、全国各地の地場産業がさまざまな苦難を抱えています。しかし地場産業が本来持っている実力を、デザインによって引き出すことができれば、その状況をすこし良くすることは可能ではないでしょうか。この取り組みによって、そういう希望を持つことができました。機会があれば、ほかのいろいろな地場産業の再生を行ってみたいと思っています。僕はもともと職人の手仕事が大好きですし(笑)

また、日本人が本来持っていた日常生活のなかの「美」も再発見し、学ぶところが多いことを痛感しました。僕も、つい海外のデザインや生活観に目を奪われがちです。ですが、見慣れた生活のなかにこそ、真の美も潜んでいるのです。それを発掘し、磨き、現代の生活にアップデートする。そういうデザイン手法について、これからも研究と実践を続けようと思います。